【入院拒否】介護施設の認知症入居者が危ない
有料老人ホームやグループホームなどの介護施設で、新型コロナウイルスの集団感染が頻発しています。実態は不明瞭(隠蔽「クラスター調査情報」が高齢者を襲う」参照)ですが、700件を超すとも言われています。
認知症の中等度から重度の人が、入院待機と称して実際上の「入院拒否」となるケースが相次いでいます。ついには死亡にまで至りました。
この事態に埼玉県の大野元裕知事は「認知症等の特殊な事情を抱えていて、病院の受け手がいなかった」とコメントしています。
特殊な事情とは何を指すのか
「カラダは元気で要介護2の認知症」と言うと、介護に携わる方は大体ピンときます。認知症のBPSD(行動・心理症状)は実に様々ですが、介護施設で暮らすには「自傷他傷行為がないこと」「他の入居者に迷惑をかけないこと」が条件になります。このギリギリくらいの人のことです。まずこの層が対象になります。
それ以上となると、基本的には精神科病院や認知症病棟などでの入院加療が必要なレベルなので介護施設にも暮らしていません。
また、認知症が軽度でもベッド転落の可能性がある人や、転倒リスクの高い人も含まれてくるでしょう。
そうすると介護施設に暮らす多くの人が該当者になり得ます。
世界一の精神科病院は当てにならない
厚生労働省のデータをみると、精神科病院数の全体構成比は12.7%、病床数は16.0%になっています。一般病院の認知症病棟(病床)は5.6%で計21.6%にもなります。そのうち20.7%が認知症患者ですから、認知症患者の病床数は相当数稼働していることがわかります。
これが活用できない。
平均在院日数は異常とも言える値となっています。これは旧優生保護法の影響です。
厚労省の指導で病院が削減されるなか、タブー化された精神科病院は約20年間ほぼそのままです。それどころか在院日数が異常なまでに長く、公的医療費負担が大きくなっています。
現状の指定感染症病院数では認知症患者の十分なケアは困難です。
世界一の精神科病院もタブー化されて使用できない。これが真実です。
2つの解決への道のり
ひとつは感染症病床の増強です。2021年2月2日の緊急事態宣言延長の会見で菅義偉内閣総理大臣は「東京都ではこの1か月で2000病床追加した」と述べましたが、「たった」が抜けています。
「【鼎の軽重を問う】特措法・感染症法改定法案審議」で指摘した通り、民間の「私立」病院に対して「罰則」を設けて統制するべきです。
同会見で対策分科会・会長の尾身茂氏は「私は5類に下げるべきではないと思っている。必要のある人のみ入院させる。法律の改正案でも明記されているからだ」と述べています。捻れを助長して、マッチポンプを演出していると言わざるを得ません。
さらに緊急事態宣言延長会見で分科会・会長の「私見」を述べるのは、ミスリードを招くうえルール違反の失格です。
ふたつめは「だったら素直に」5類への引き下げを行うことです。
『介護評論』