誰も言わない ー 老人ホーム種別の実情
高齢者施設を探すにあたって最初の関門がこの「種別」です。
今回は「売り手」では言うことのできない実際を示しながら、探し始めの方でもわかりやすくポイントを絞って解説します。特別養護老人ホーム(特養)
建設費などに多額の税金が投入されている介護施設。その役割からセーフティネットの色彩が濃い。利用費が比較的安価となっている。
要介護3以上で順番待ちに登録できるが、介護度が高い人が優先される。このため行政区を跨いで重複登録する人が多い。
個人情報保護法で登録名簿が一本化されず、実数不明。これらにより、いつ入所できるかわからない状態となっている。
↓point
実際には要介護4か5で「寝たきり」でないと入所は難しい。また、重度の認知症やIVHなどの医療依存度が高い人も厳しいです。
介護付き有料老人ホーム
主に民間運営で、介護サービスを合わせて提供する介護施設。施設利用料はさまざまだが、介護費用は要介護度に合わせて一定。
運営が介護費用を一律丸取りにする方式なので、介護保険者である行政からすると費用負担が重くなる。
このため「開設の総量規制」がかかり、新規建設が年々少なくなっている。
↓point
特養の順番待ちで入居する人も。高級タイプから廉価版まであります。近隣(30分圏内)で3軒ほどピックアップして見学することをおすすめします。
住宅型有料老人ホーム
生活支援サービスのみを提供する高齢者施設。総量規制で「介護付き」にできなかった場合にこのタイプで開設することが多い。
介護サービスは併設されている居宅介護支援事業所と訪問介護事業所から提供される。
介護サービスを利用した分だけ支払うので、月額費用が変動する。要介護3以上になると、実質限度額オーバーになることが殆ど。
また、介護費用の自己負担分は「介護付き」と比べて割り高となる。
限度額以上は全額自己負担になるが「請求しません」という場合が多い。いずれにせよ契約時の口約束である。そもそも仕組みに無理があるため。
↓point
資金的に余裕があり、高級な施設を選びたい人にはアリ。「介護付き」とは異なり、介護サービスをカスタマイズできるので、比較的自由な暮らしができることもあります。
グループホーム
地域密着型で、身の回りのことは概ね自分でできる「認知症」高齢者専門施設。小規模で入居者同士が助け合いながら生活する。
このため認知症である診断が必須となる。
介護費用の考え方は「介護付き」とほぼ同じ。身の回りのことができなくなると、退去を求められることがある。
↓point
希望施設と同一行政区でないと入居できないが、一旦住所を移してから入居する人も。また、過当競争の激化により身体状態が悪くなってもそのまま住み続けられる場合があります。
サービス付き高齢者向け住宅
上記まではすべて厚生労働省管轄だが、本タイプは国土交通省であることがポイント。施設に関しては、厚労省の監査が入らない。
介護に関しては「住宅型」と同じであることが多い。また、デイサービスを併設していることもある(こちらは厚労省の監査が入る)。
夜間の介護に不安あり。夜間介護パックのような介護保険対象外サービスを用意している施設もある。
過去の雑多な種別を「サービス付き」としてひとまとめにした歴史があり「玉石混交」。
ひっ迫した独居高齢の住いとして誕生したが、介護施設としては仕組みに無理があるため、経営が不安定な運営会社も多い。
↓point
安いからと飛びつくのはキケン。ある程度の目利きが必要です。
介護老人保健施設(老健)
在宅復帰を目標として機能回復訓練をする施設。期限は「基本的に」90日。病院と同法人で併設されていることが多い。
期限が来ると併設の病院に1泊2日の「検査入院」をして再度老健に入所を繰り返す人や、アセスメントを繰り返して「継続」する人もいる。医療費も込みという形態からである。
↓point
経済的な理由からそのような利用をする人もいますが基本的に「生活する場ではない」ので、本人には過酷な状態です。なるべく早く退所することをおすすめします。
小規模多機能型居宅介護
2025年問題を背景にした地域包括ケアシステムのなかで登場した仕組み。ショートステイ・デイサービス・訪問介護などの組み合わせで、包括的に一定額で提供する。
特別養護老人ホームなどの「ハコモノ行政」や、民間の介護施設過剰供給の低減も狙いとしてはある。「介護付き」の施設部分が自宅であるというイメージ。
司令塔であるケアマネジャーと反りが合わない場合に変更が難しい。
また、今まで通っていたデイサービスの継続利用も実質できなくなる。
↓point
住み慣れた我が家で最期まで生きるという本来あるべき姿を体現しています。小規模運営なので経営基盤がしっかりとしている事業者を選んでください。
まとめ:本人も含めて家族全員が幸せな選択を
大雑把ではありましたが、これから介護施設を検討する方に必要な情報を整理しました。ぜひご活用ください。
『介護評論』