“失敗” した特措法・感染症法改定
2021年2月12日の第55回新型コロナウイルス感染症対策本部にて、菅義偉内閣総理大臣は「現在、10の都府県において緊急事態宣言に基づく対策をお願いしているところであります。感染者の減少傾向は、はっきり見られておりますが、多くの地域で引き続き病床はひっ迫しております。〜中略〜
感染者を減少させ、入院者、重症者も減少させることが必要」と緊急事態宣言延長の継続を示唆しました。情報感度の高い読者はお気づきでしょう。この発言は感染症対策の “失敗” を露呈しているのです。(気づいた方は本記事を読み進める必要はありません)
新型コロナウイルス感染症「6つの指標」
2020年8月7日に感染症対策分科会はモニタリング指標を提言し、現在もその指標を判断の基準・目安として運用しています。
医療提供体制等の負荷(病状のひっ迫具合)が50%未満になること。緊急事態宣言の解除ができない最大の理由です。
同提言で7つの施策も提言されていました。
しかしながら「地域の実情に応じて、適宜組み合わせて実施することや、同一都道府県内であってもエリア限定で実施することなどもあり得る」という官僚答弁で曖昧になった施策があります。
“入院患者受入病床の拡充”
分母が増えれば、当然率は下がります。
しかしまだ、挽回のチャンスは残されていました。特措法・感染症法改定です。
国は責任を果たさずに国民に擦りつけた
世界一の病床数である日本で、なぜ医療崩壊寸前なのか? 端的にいえば民間(私立)病院を統制できないからであり、逆にいえば統制できている海外ではケタ違いの入院患者でも崩壊していない訳です。
解決できるのは立法府だけです。今年1月の内閣法案はご存知のとおりで、個人や飲食店に行政罰を与えて医療機関には “勧告” どまりの内容でした。
与野党ともに、ココに斬り込んだ政治家は1人もいませんでした(詳報は「【鼎の軽重を問う】特措法・感染症法改定法案審議」参照)。
現状は当たり前ではない
少し想像の翼をひろげてみましょう。
昨年8月からの行政の要請を病院が受け入れていたら。
今年1月の特措法・感染症法改定で、要請に応じない病院に行政罰を盛り込むことができたなら。
今頃は緊急事態宣言が解除されていたのです。高齢者を危険に晒すようなmRNAワクチンも必要ないでしょう。
休業に喘ぐ事業者や、自殺に追い込まれる人も出てこない。
それどころか、海外でワクチンに困ってる国に譲るという外交展開だって考えられたのです。
しかし、結果は緊急事態宣言延長の継続です。これを “失敗” と言います。
『介護評論』