隠蔽「クラスター調査情報」が高齢者を襲う
2021年1月31日付 北海道江別市健康福祉部は、同市の特別養護老人ホーム「夢あかり」で新型コロナウイルスの集団感染が発生したことを公表しました。入所者8名、職員4名、計14名の感染です。
初期発生のショートステイでは非公表だった
同施設は社会福祉法人「北叡会」が2011年4月に開設したユニット型特養(定員80人)で、ショートステイ(定員10人)とデイサービス(24人)を併設しています。
※補足:ユニット型
リビングを囲むように全室個室の居室が配置され、比較的少人数の入所者がグループ(ユニット)で生活するタイプ。新型特養とも言われ、従来型多床室よりも料金が高いがプライバシーに配慮されている。
さらに同法人が運営する小規模多機能、住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅、居宅介護支援事業所、訪問介護事業所が隣接しています。いわゆる複合型施設です。
2021年1月27日にショートステイで集団感染が確認されていましたが、公表していませんでした。程なく特養でも集団感染が発生し、公表に至ります。現在は関連性を調査しています。
同法人の対応は「まだ良心的な方」
全国で特養や介護老人保健施設(老健)の集団感染が多発し、施設名を公表しています。
しかしながら民間の有料老人ホームで集団感染が発生したとき、施設名が公表されることはごく稀。地域のみの発表です。
新型コロナウイルスの特性として、80歳以上の死亡が6割を超えます。さらに基礎疾患のある人が危険とされます。
要するに老人ホームの高齢者は「新型コロナ弱者」であり、およそ文明社会であれば保護の対象です。
クラスター調査データが国民に共有されない
ウイルスですから「集団感染」するところに近づかなければ、あるいは対策すれば罹患率は下がります。当たり前です。
▶︎静岡県のクラスター調査発表(一例)
病院・福祉施設:45.0%
家庭内:26.8%
飲食店関係:3.5%
あれほど矢面に立たされた「飲食・夜の店」が殆ど無い。対策が進み、事実功を奏したと言えるでしょう。
一方で病院および福祉施設は、それと比較して約12倍以上の集団感染が発生しています。
問題の「民間の老人ホーム」は埋もれてしまい数すらわかりません。
せっかく莫大な労力と税金をかけて調査したデータも公表されていません。個人名は伏せて特定できないようにすれば、公開できるはずです。
パニックを抑えるには、古今東西、正確な情報のみです。
非公表の理由は「民間事業者に配慮」「風評被害を防ぐため」とし、挙げ句は「国民が動揺するから」と称しています。
国民の命は次点のようです。
本気で国民の命を守る気など無いと、厳しく指摘しておきます。
(現時点で飲食店関係を規制するのは、弾圧に等しいと主張するのはこのためです。別の機会に譲ります)
2021年1月13日の緊急事態宣言で対策分科会・会長の尾身茂氏は「(感染症対策が進まなかった理由として)感染対策において最も大切なことは、重要な疫学情報を迅速に自治体間、あるいは自治体と国で共有することが重要」と述べました。
『介護評論』が同氏に批判的なのはこうした態度だからです。この発言はその象徴です。
民主主義国家であり、主権者であり、納税者である国民に情報共有しない。
分科会の座長からして権威主義的な秘密主義者です。
結果的にどうなるかといえば、わからないので闇雲に恐れ、疑心暗鬼となるしかありません。
そして高齢者は家に「軟禁状態」となり、体力・認知能力の低下を招いています。
もしかしたら併設の介護スタッフは別でも、清掃員が清掃用具でウイルスを拡散しているかもしれない。納入業者も事実を知らない。
すべてコントロールすることなど、このウイルス関しては当初から不可能であると指摘してきました。
隠蔽が高齢者を、国民を襲っています。
『介護評論』