beforeコロナ - なぜ、医療崩壊していなかったのか?

新型コロナウイルス流行前の2019年と現在の2021年では隔絶の感を禁じ得ません。今、医療現場では崩壊が叫ばれ、政治も混乱を極めています。


病床数やICU数とその稼働率、機材や人員不足など多くの分析がなされています。しかしながら、最も素朴な疑問に誰も答えていません。


なぜ、新型コロナの流行前は医療崩壊をしていなかったのか。



数字を整理してみると「日本はそれほど悪くない」

ー 医療機関数

世界第3位。そのうち「公立」はアメリカ・イギリス・フランスなどと比較しても遜色ありません。

つまり私立(民間)病院が多いから手が打てないというのは当たりません。


- 病床数

堂々の第1位。3位とはほぼダブルスコアです。

5位のイギリスと比べるとトリプル以上となっています。


- ICU(集中治療室)

掘り下げてみましょう。日本集中治療医学会の数字を基にすると、「人口10万人あたりのICU等病床数」は4.3人。

一見少なく見えますが、実は各国で基準が揃っていません。

これらを考慮に入れれば「病床数は悪くない」といったところでしょうか。


- 医師・看護師の人数

医師数は他の先進国と比較してやや少ないものの、看護師数は第2位。


総合してみれば問題はなさそうです。


- 医療機器・医薬品の市場規模

2位。高水準です。


これで機材が不足しているとは到底思えません。


- 感染者数

ジョンズ・ホプキンス大学の「人口100万人あたりの感染者数」は3,000人程度です。

世界平均の1/3以下、大流行している国と比較しても約1/20程度です。正に「桁違い」です。


世界が羨む「ジャパンミラクル」。いわゆるファクターXを突き止めようと、世界では様々な研究が行われています。いわく「BCGワクチン説」「交差免疫説」「ネアンデルタール人交配説」

これらも大切ですが、即効性はなく「遺伝子ワクチン」頼みとなっています。



準備を怠った日本

前述のグラフの通り20205月頃には一旦治りましたが、世界の誰もが口を揃えて「今冬には必ず再流行する」と予言していました。


6か月。他にできることは無かったのでしょうか。


実は、現行(平成24511日施行)の新型インフルエンザ等対策措置法で、再流行時の病院稼働計画の策定と準備ができたのです。内閣府と東京都知事の怠慢であると断じます。5大都市を抱える知事も同罪でしょう。


感染症2類相当に指定されたことがすべての始まりでした。元々の感染症基本戦略は「ウイルスと共存」なので、感染症指定病院と病床数は少なかったのです。

そこに患者(PCR検査陽性者)が集中するのも当然ですし、疲弊するのも当然でした。


5類に格下げすることもせず、2類相当で継続するとして準備をすることをせず、時を浪費したのです。



DNAR(Do Not Attempt Resuscitation) 「蘇生措置拒否」

平均寿命を比較してみると、日本はトップです。


2021119日付 厚生労働省「人口動態統計速報」の死亡数を見ると前年とほぼ変わりがありません。


2021113日付  東洋経済オンライン「年齢別の陽性者数」に記載されている新型コロナウイルスの死亡者数は3,901人です。

年代別構成比は以下の通りとなります。

 80歳以上 61.5%

 70歳代 24.1%

 60歳代 8.4%

 50歳代 2.8%

 40歳代 0.8%

 30歳代 0.2%

 20歳代 0.1%

 19歳以下 0.0%

 非公表 1.7%


70歳以上で85.6%。誤解を恐れずに言えば、基礎疾患のある75歳以上は「寿命」です。80歳以上ならば「普通の風邪」でも命取りになると言われる所以です。


beforeコロナでは、かかりつけ医から見知った病院に入院します。カルテもありますし、医師も本人・その家族までよく知っています。

そこで人工呼吸器・気管挿入などの必要に迫られると、医師が積極的にDNARの説明を家族にするのです。


「これ以上もできますが…」と。本人の意思や家族の意向など話し合い、人工呼吸器の使用にまでには至らないことが殆どです。


医師も苦しみが長くなるのを避けたい。そうした良心が働き、結果的に医療資源不足はありませんでした。



縁もゆかりもない病院で入院

現在は入院が必要になると保健所などから指定病院に回されます。カルテも無いですし、医師も本人のことも家族のことも知りません。


医師も人間です。元々訴訟リスクが高い職業で、そのうえ同調圧力がかかっているのです。積極的DNARの説明をするのは無理でしょう。


これが医療大国日本で起きている現実です。


指定医療ルートから地域医療ルートに戻さない限り、「死にたくても死ねない」という無慈悲な延命医療が続くでしょう。

そもそも「ウイルスと共存」は、天寿を全うする装置として機能していたのです。それを「新型コロナに打ち勝つ」との号令で“懸命な医療を提供”し続けています。

斯くして新型コロナウイルスは社会的なゾンビウイルスに変異したのでした。



本当の“afterコロナとは

兵庫県では3割の開業医が廃業を検討しています。これにより地域包括ケアシステムも死に体となっています。

新型コロナウイルスが終息した後に残るのは、地域医療・地域介護の崩壊ではないことを祈るばかりです。


『介護評論』

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