【抗体保有率 0.91%】の意味を追え

202125日に厚生労働省は、20201214日〜25日にかけて実施した第2回新型コロナウイルス抗体保有調査結果を発表しました。


5都府県15043人が参加し、うち東京都は3399人中31人で、抗体保有率は0.91%でした。検査は無作為抽出ではなく参加型なので、そのバイアス(偏り)を考慮に入れると「0.621.29%」の範囲になります。



田村憲久厚生労働大臣は「1%足らずということですので、多くの方々が罹って集団免疫に達したという話では全くない」とコメントしています。



新型コロナウイルスで集団免疫はできない

抗体保有とは「獲得免疫」のことです。樹状細胞が侵入したウイルスの情報を読み取り、ヘルパーT細胞経由でB細胞が抗体を作る(液性免疫)。あるいはキラーT細胞が、ウイルスに感染した細胞もろとも破壊(細胞性免疫)します。


新型コロナウイルスの抗体は、感染すれば全員が陽性になる訳ではありません。また、少しずつ陰性化していきます。保っても6か月間といったところでしょうか。ただし、これはB細胞のことでキラーT細胞は不明です。




それでも集団免疫に拘るのはなぜか

イギリスのインペリアルカレッジロンドンのニール・ファーガソン教授の主張が始まりでした。「人口の60%が感染すれば流行が収束する。集団免疫を獲得するのが望ましい」


この理論は極めて簡単な式であらわすことができます。


集団免疫率(%)= (1-1/R0)×100

R0:基本再生産数


基本再生産数は感染強度のことで、感染していない集団に1人の感染者が入ったとき、何人感染するかの「平均値」です。環境や季節性、何らかの対策によって変動します。


補足:実効再生産数とは「直近7日間」から算出された値


日本の基本再生産数は「2.5」。当時のドイツを参考にして、シビアな数値が採用されました。計算すると集団免疫率は60%になります。


これに拘っているのです。

この「60%」という数字が根拠になり、独り歩きをしています。前述の厚労大臣の発言は、「0.91%」は「60%」に程遠いという主旨です。



誤解された新型コロナウイルスにおける「集団免疫」

誤解その1終生免疫ではない

A型肝炎やEBウイルスの抗体は終生免疫として機能しますが、新型コロナウイルスの抗体は陰性化することが判明しています。大流行したニューヨークの抗体陽性率でも19.9%でした。到底60%には到達しませんし、キープもできません。

誤解その2基本再生産数「2.5」は固定値ではない

仮に「2.0(日本における流行当初の妥当値)にすると、集団免疫率は「50%」になります。このように設定次第で如何様にもなります。


誤解その3獲得免疫のみで判断している

自然免疫で撃退すれば感染はしませんし、抗体もできません。つまり先程の式は自然免疫を考慮に入れていません。


(余談ですが撃退中にPCR検査を行うと「陽性者」になることがあります。感染とPCR陽性を分けなければならないのはこのためです)


また、交差免疫(従来のコロナウイルスによる免疫反応)は仮説段階ですが、日本人は約75%が保有しているという研究もあります。


誤解その4均一に感染するというモデル

この理論は免疫学的に均一な集団がウイルスの曝露にあうと、一定割合で感染することを前提にしています。


実際には強い人と弱い人がいるので一定割合にはなりません。わかりやすく言えば、若者と高齢者です。



脆弱な論拠のもとに行われる政策

この基本再生産数を人為的に下げ、集団免疫率を押し下げることによって「実効再生産数」を1未満にしようとしています。


緊急事態宣言による活動自粛や、行政罰による個人や飲食店事業者への制限。家に引きこもることを推進しました。結果は家庭内感染を引き起こしています。


そして、ワクチンです。ですがこれにも持続期間はあり、6か月間前後になると予想されます。


直感的にもわかる話です。基礎疾患のある高齢者が重症化しやすく、若者に無症状が多い理由は「自然免疫の減衰」であると。介護施設での集団感染が頻発するのを見れば、おおよその察しがつくでしょう。


抗体保有率が1%を切っているから集団免疫が獲得されておらず、集団免疫を獲得するために「安全で有効」と称するワクチンを高齢者から打つという政策に変わりは無いようです。


ちなみに、現時点(202126)の実効再生産数は「0.74」です。


『介護評論』

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